手術後の変形とは

最近は眼瞼下垂手術が非常にポピュラーになったため、多くの医療施設で手術が行われています。眼瞼下垂手術は瞼の開きが左右1mm違っても、また二重の幅が1mm違っても左右非対称に見えます。つまり許容度が1mm以下という非常に難しい手術だということが言えます。しかもいちばん目につく場所でもあり、仕上がりがきれいでなければなりません。美的なものが求められる世界ですから、形成外科の技術はもちろんのこと美容外科の技術と考え方、究極的には手術するドクターの審美眼が問われることになります。それと患者さんの目の形に対する好みや思い。これに合わせなくては満足してくれません。一方患者さんの思い込みが強く、手術で得られることと得られないことを十分理解していないこともあります。そのときには手術の限界を十分に分かってもらえるまで手術しないこともあります。私は年間で500例以上の眼瞼下垂手術をしています(2020年末で総数8000例を超えました)が、未だに毎年手術手技の細かな改善を繰り返しています。1例1例が真剣勝負で、いつもホームランを打とうと努力しています。さすがにアウトということはないのですが3塁打に終わることもあります。これが3%くらいあります。幸い細かな修正を加えてホームベースに帰って来られることがほとんどです。他の施設で眼瞼下垂手術を受けた方が、結果が不満足で当科を受診されるケースが以前から相当数あります。どこでも手術が行われるようになれば、それに比例して不満足なケースが増えるのは避けられないかもしれません。眼瞼下垂手術は決して簡単な手術ではありません。眼瞼下垂手術が保険でできるからどこでやっても同じと考えてはいけません。もっとよく情報を集めて、吟味してから手術を受けられることをお勧めします。修正手術は多くの場合自費治療になります。すべて局所麻酔で外来手術で行います。

 

結果が不満足で来られる方の訴えを分析してみると大きく分けて以下になります。多くはこれらの組み合わせからなります。

1)開瞼幅の左右差

2)重瞼幅の左右差

3)眼瞼後退

4)傷痕

開瞼幅の左右差

手術を受けたのに目が開かない、左右の目の開きが違う場合です。瞼を開ける筋肉の先についている眼瞼挙筋腱膜を剥がして再度調節します。前回の手術で皮膚の下は瘢痕組織で癒着していますので、もう一度それらをきれいに剥がして各パーツに分解します。瞼の構造は薄い膜状の組織が折り重なってできています。ちょっとでも剥がす層を間違えると本来の構造を見失ってしまい、手術が困難になります。2014年にCO2レーザーメスを導入してからこの操作が非常に楽になり、手術時間の短縮も可能になりました。腱膜の調節を左右行って患者さんを起こして目を開いてもらい、目の大きさが左右対称であることを確認します。最後に二重の線を固定しますが、この二重の幅も左右対称になるように調節して皮膚を縫合します。

札幌眼瞼下垂.jpg
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重瞼幅の左右差

二重のラインが消失した場合は開瞼力が弱ければ開瞼を強くした上で、二重の固定のために皮下縫合を密にして二重ラインが緩まないようにします。一般的に行われている皮膚だけを縫う方法ではラインが緩んでくることが多いのです。二重の幅が左右違う場合、幅が大きい方と幅の小さい方のどちらに合わせるか、もしくは両方とも小さくするか両方とも大きくするか、患者さんの好みを聞きます。幅を広くするには切開線よりも上の皮膚を数mm切除することで幅を広げます。狭くする場合は切開線よりも下の皮膚を切除して、固定された上の組織を隔膜上で広く剥離して下に下げて皮膚を縫合します。広い二重のラインが消えない場合は、おなかから脂肪を取って隔膜の上に移植することもあります。二重の幅を狭くする方が手術の難易度は高くなります。一般に腱膜を前転して開瞼幅を広くすると重瞼幅は狭くなり、開瞼幅を狭くすると重瞼幅が広くなるという反比例の関係にありますので、患者さんがどういう形を希望するかによって術前のシミュレーションを綿密にしなければなりません。

札幌眼瞼下垂.jpg
札幌眼瞼下垂.jpg

眼瞼後退

腱膜を前転しすぎてギョロ目になった状態です。上瞼の縁が黒目の上まで上がり、黒目の上の白目が出ている状態です。瞼板から腱膜とミュラー筋をはずしその開いた隙間に耳から取った軟骨を移植します。筋膜や脂肪などの柔らかい組織を移植しても、瘢痕拘縮によりまたギョロ目になることが多いので、ひきつりの力に負けないつっかえ棒としての硬さがある軟骨が適しています。耳の傷はほとんど目立ちません。

傷痕

縫合法の荒さが傷痕に出ます。われわれは8-0ナイロンや7-0ナイロンという細い糸を用いて、顕微鏡下で密に縫合しています。傷痕が目立つ場合は傷痕を切除して丁寧に縫合するしかありませんが、切除量が多ければ二重の幅も変化しますので、術前のシミュレーションが重要です。