眼瞼下垂とは

年を取って瞼が垂れ下がってくると、視野が狭くなり新聞やテレビが見えにくくなるばかりでなく、頭をぶつけたり、つまずいて転びやすくなるなど危険なことも増えてきます。眼瞼下垂は瞼そのものが開けにくくなることと、皮膚が垂れ下がってくることの二つの要素が重なって起こります。ですから治療は瞼そのものを上げて黒目を出してあげること、垂れている皮膚を処理して目の前にかぶってこないようにすること、この二つを実現することが目標になります。眼瞼下垂は年齢とともに少しずつ起こるものですから、年だからしょうがないとあきらめていたり、眼科で相談しても手術を勧められなかったりなど、適切な治療によって改善することをご存知ない方がたくさんいらっしゃいます。私たちのクリニックで手術を受けた多くの人が、もっと早く手術を受けていればよかったと、感想を述べています。

 

眼瞼下垂になると目が開けられないため、眉毛を上げて物を見るようになり、おでこのしわが深くなります。おでこの筋肉は後頭部までつながっていて、いつもおでこの筋肉を緊張させていると、肩が凝ったり頭痛がします。瞼というのは眉毛とおでこと一体となって動いています。眼瞼下垂の人は視野が狭くなるので、脳が眉毛を上げるように指令するため眉毛と目の間隔が広がっていることが多いのですが、眼瞼下垂の手術をすると脳から眉毛を上げろという指令が止まるため、眉毛が下がってきます。眉毛は瞼とつながっていますので瞼の上に眉毛という重りが乗っかっているようになり、眉毛と目の間隔が狭くなります。この状態で眼瞼下垂手術をしても眉毛と目の間隔が詰まっているために、怒ったような、にらみつけたような目になります。このような方は「おでこのリフト」の項目でお話ししたように、眼瞼下垂手術の前にまず眉毛を上げるために「おでこのリフト」をする必要が出てきます。患者さんは瞼の問題と思っていても、実は瞼だけの手術で済まない場合があるということを知っておいて欲しいと思います。

 

眼瞼下垂の多くは眼瞼挙筋腱膜という瞼を開けるベルトのようなものが、本来瞼にくっついているのが緩んでしまい、自分では十分に開けられない状態になっています。ですから訓練によって改善することはできません。手術はこの緩んだベルトを本来の位置に固定してあげることが目的になります。病的な眼瞼下垂は、保険治療の対象対象になります。皮膚を切開したあと、はがれた眼瞼挙筋腱膜を引き出してきて、瞼を上げる力が丁度よくなるように調節して、瞼板という瞼の硬い部分に固定します。さら二重の幅を調節して皮膚を縫合します。瞼を開ける幅はミリメートル単位の調節になり、しかも左右対称にしなければなりません。また二重の幅も左右対称になるように仕上げなければなりませんので、形成外科と美容外科の高度な技術が必要になります。私たちは年間500人以上の方の眼瞼下垂治療を行なっており、これは日本の形成外科施設の中でもトップクラスの症例数です(2020年末で総数8000例を超えました)。

手術の方法

局所麻酔による外来手術を行います。チクッという痛みがあります。皮膚を切開して眼瞼挙筋腱膜を出します。はがれている部分を前に引き出して、瞼板という瞼の硬い部分に縫合します。起き上がって左右の目の開きが十分でかつ対称になったら、余分な皮膚を切り取り、最後に二重になるように皮膚を縫合します。二重にするのは傷を隠せることと皮膚がまた垂れ下がってくるのを予防するためです。瞼の構造は大変デリケートにできていますので、私たちはより繊細な技術で手術を行えるように、手術用顕微鏡を使って手術をしています。また手術中の出血を最 小限にできるCO2レー ザーメスを用いています。これにより手術時間も短縮できます。平均手術時間は40分です。

札幌眼瞼下垂.jpg
札幌眼瞼下垂.jpg

術後の経過

手術後2~3日目がいちばん腫れます。目のまわりが赤や紫色になることがあります。その間は冷水で冷やしてください。3日目以降は温湿布が有効です。しかし極端に冷やしすぎたり温めすぎたりしないでください。やり過ぎは逆効果です。術後7日から10日目に抜糸をしますが、その頃はまだ腫れています。2週間目以降から急に腫れは引いてきますが、1ヵ月目はまだ傷が硬く、突っ張ったように感じます。  睫毛周囲の皮膚の感覚もしびれている状態ですが、時間とともに戻ります。本当に腫れが引いて良くなったと感じるようになるには3ヵ月位かかります。術後1週間目以降は、1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目とフォローしていきます。術後に左右差が目立ち修正が必要になるのは3%位の方ですが、追加の手術により改善することができますので心配要りません。

札幌眼瞼下垂.jpg
札幌眼瞼下垂.jpg

その他の注意事項

1)この手術はいちばん人目にふれる瞼を手術するわけですから術後の腫れや色が取れるまでの2週間くらいはとても気が重い期間です。しかし、腫れは必ず引きますし、目を開けるのがとても楽になりますのでほんの少しの辛抱です。気になる方は手術の後にサングラスをかけると良いでしょう。

2)手術の後は家やホテルで、水道水でタオルを濡らし硬く絞って、1〜2時間冷やしてください。氷で冷やし過ぎるのは禁物です。冷水で十分です。冷やすのも最初の2日間で止めて、3日目以降はぬるま湯で温湿布をするとよいでしょう。

3)手術当日は目の部分は洗えません。拭き綿を渡しますので、小さくはさみで切って、朝と晩の2回、静かに傷の汚れを拭いてください。消毒は不要です。

4)軟膏を出しますので、綿棒の先にほんの少しつけて、朝と晩、傷に薄く塗ってください。これは抜糸に来るまで、1日2回続けてください。

5)手術の次の日から顔を静かに洗い、入浴もできます。

6)抜糸は術後7日目から10日目にします。

 

7)瞼のお化粧は術後2週間は控えてください。抜糸のあとは傷の部分は柔らかいタオルでやさしく拭いてください。こわがって拭かないと、垢だらけになります。

8)瞼は左右の開け方が1mmでも違うと不ぞろいに見えます。手術直後はきれいに合っていたのに、術後に再度どちらかの目がまた下がってくる事もあります。ですから術後の診察は1ヵ月目、3ヵ月目、6ヵ月目と必ず受けてください。必要な場合は再度手術をして合わせる事ができます。

9)心臓や脳の病気で、坑凝固剤(血をさらさらにする薬)を飲んでいる方は、服薬を止めなくても結構ですが、内出血でかなり紫色になるかもしれません。それでも2~3週間で色は取れます。


10)術前の血圧測定で収縮期血圧が200以上ある場合は、手術を中止にすることがあります。術後出血の可能性が高くなるからです。

 

11)術後に今までかけていた眼鏡の度が合わなくなることがあります。黒目にかかっていた瞼が上がるため、眼球の曲率が変化するためです。術後1~2ヵ月頃に眼科で再度検眼してもらい、レンズを合わせてください。

 

12)術後は瞼が腫れて物が見えづらくなることがありますので、交通事故防止のため手術当日の車の運転はしないでください。

 

13)手術翌日に瞼が紫になって目が開けられないくらい腫れたら、受診してください。中に血がたまっているためで、傷を開けて取り出す必要があります。術後直後に歩き回ったり頭を下げたりすると、出血することがありますので、術後はすぐタクシーで帰ることをお勧めします。自宅やホテルに戻って、横になって1〜2時間冷やしてください。

14)ごくまれに手術後に目が開けづらくなったり、目の奥の違和感が強くなる人がいます。これは強直性の眼瞼痙攣といい、術前に隠れていた病気が出てくることがあります。このときには新たな治療が必要になることがあります。