下瞼の手術
下瞼の膨らみやシワは、疲れたり、年を取った顔に見えますので、とても気になる部分です。下瞼の膨らみは脂肪を切除したり、膨らみの下の段差を平らにすることによって改善します。下瞼のシワは皮膚に緊張を与えるように皮膚を引き上げることによってシワを伸ばします。余った皮膚は切除します。
年齢や皮膚のたるみ具合によって手術方法が異なってきますが、この部位の手術による効果は良好で、かなり長い間効果が持続します。
この手術は大変な熟練と繊細な技術を要しますので、手術用の顕微鏡を用いるマイクロサージャリーによって行っています。これは私たちが 30 年も前から行っている方法で、これによって出血が最小限になりますので手術後の腫れが少なく、傷も大変にきれいになります。
下瞼の手術 麻酔
下瞼の睫毛の下に沿って局所麻酔を注射します。ほんの少しチクッとするだけです。手術中は意識はありますが、丁寧に少しずつ行いますので心配要りません。最初は顕微鏡の明かりが強いのでまぶしく感じますが、すぐに慣れます。
下瞼の手術方法
睫毛のすぐ下を切開します。この部分はいちばん傷が目立たなくなる場所です。睫毛の近くで切開するからといって、睫毛がなくなることはありません。皮膚の下の筋肉を切開するとその下に脂肪を入れた袋が見えます。脂肪が多いので飛び出て見えます。(画像1)
脂肪の袋の下の凹みをはがします。この溝のような凹みが年齢を感じさせる原因です。この凹みを和らげることがこの手術のひとつのポイントです。(画像2)
脂肪の袋の下の凹みに、飛び出ていた脂肪のかたまりを流し込みます。これにより脂肪の膨らみが減り、同時に袋の下の凹みが持ち上がります。例えて言えば、山を崩して谷をうめるような操作です。 (画像3)
この方の場合はまだ脂肪の量が多いので少し切除しました。上瞼の上に置いてあるのが切除した脂肪です。このように微妙な調節を行いながら下瞼の凹凸を平らにしていきます。 (画像4)
最後にシワの状態によって余った皮膚を切除したり、皮膚に緊張をかけて少し吊り上げるようにして縫合します。シワの多い人は吊り上げる力を少し多めにしますので、最初の2週間くらいはつり目のように見える事があります。しかし時間が経てばこれも自然に落ち着いてきます。下瞼の傷は時間が経つとほとんど分からないくらいきれいになります。このように下瞼の手術は脂肪の処置と皮膚の処置を上手に組み合わせて、 若々しい瞼にするのです。
もし30歳代で下瞼にシワがなく、張りのある皮膚をしていて、脂肪だけが多い場合は、皮膚を切らずに瞼の裏側の粘膜を切開して脂肪を切除する方法も選択できます。これは皮膚表面にまったく傷が残らない方法ですが、40歳以上の方で皮膚の張りがあまりない場合は、逆にシワが目立ってくることがあります。皮膚の状態によってどちらの方法がよいか選択することになります。
下眼瞼形成術の注意事項
1)手術のあとは安静に:手術のあとは家やホテルに戻って、早く休んでください。術後の安静がこの手術ではとくに大切です。頭を下げたり、重いものを持ったりすると、血圧が上がり、出血する事があります。中に出血すると白目が赤くなり、皮膚も紫色になって腫れますし、その後に傷の引きつりを起してくる事がありますので、くれぐれも手術当日の安静が大事です。
2)2日間は水で冷やす:手術当日と次の日までは水道水でタオルを濡らして硬く絞り、目を冷やしてください。氷を使う必要はありません。
3)傷の処置:拭き綿を渡しますので、はさみで小さく切って朝と晩に傷をやさしく拭いてください。その後に軟膏を綿棒にとって薄くつけておいてください。これも1日2回、抜糸まで続けてください。ただし軟膏をあまりたくさんつけると目に入って物がかすんで見えますので、少量で結構です。
4)3日目以降は温める:3日目以降は冷やすのではなく、ぬるま湯の温かさで軽く温めてください。熱すぎてもいけません。1 日3回程度で結構です。
5)術後1週間目で抜糸:抜糸はチクッとするくらいで、それほど痛くありません。
6)術後のフォロー:その後1カ月目、3カ月目、6カ月目、1年目と長期に渡って診ていきますので受診してください。再診料はかかりません。
7)下瞼の脂肪は取りすぎると凹んで老けた瞼になりますので、ちょうどよい量だけを切除します。若い時に下瞼の脂肪切除を受けた方は、年を取ってくると逆に凹みが目立ってくる事があります。その場合には自分のお腹の脂肪組織を移植して凹みを治す事が可能です。
8)他の病院で瞼のシワにヒアルロン酸などを注射して、皮膚がでこぼこになって来る方がいます。また目の下の凹みの部分に脂肪注入を受けて来られる方で、やはり皮膚の凹凸が目立つ場合があります。これを手術で治すのは大変困難です。切らなくて注射で簡単にできる良い方法だ、と単純に思ってこういう治療を受けると、後で取り返しがつかない結果になる事がありますので注意してください。
手術は大変効果のある方法ですが、反面予期せぬトラブルを生じる事もあります。めったに起きない事ですが、場合によっては再手術の必要が出てきます。私たちはどんな事があっても対処できる技術を持っていますので、心配しないでください。次は合併症について触れます。
下眼瞼形成術の合併症
1)血腫(けっしゅ):出血して中に血の固まりができる事があります。多い時は目が開けられないくらい腫れますので、その場合は傷を開けて出さなければなりません。めったにないことですが、術後の安静が大事という理由のひとつです。
2)引きつり:もし血腫ができた場合は術後に瞼の引きつりが出る事があります。この場合は経過を見て、修正手術が必要になることがあります。
3)感染:目の回りの手術はめったに化膿しませんが、ごく希にあります。その時は傷を開けて、膿を出す必要があります。これも適切な処置をすれば必ず治ります。
4)結膜(けつまく)の腫れ:これは術後に比較的よく見られる現象です。白目の下の部分に透明な液体がたまり、涙目のように見えます。これは白目の腫れで、何もしなくても時間とともに自然に消えていきます。人によっては数カ月かかる事もあります。